養子縁組の種類
養子縁組の仕方には次の2つの制度があります。
- 普通養子縁組
- 養親の方が年長であれば、それ以上の年齢制限はありません
- 実親との親子関係も続く旧来からの制度
- 当事者の協議による離縁も可能
- 具体例は次の通り
- 婿になる場合
- 子連れの再婚
- 相続税の節税対策として祖父母が孫と手続きをする場合
- 当事者の合意(15歳未満なら法定代理人による代諾と監護権者の同意)が必要
- 未成年者を養子にする、または後見人が被後見人と縁組をする際には家庭裁判所の許可が必要
- 特別養子縁組
- 1987年に新設された制度
- 厳格な条件が認められた場合にしか認められていない
- 原則として6歳未満のうちしか適用されない
- 実親との関係は消えるため、相続は出来ない
- 実の親子に近い取り扱いをする制度の為、離縁も基本的に不可能、かつ、親子関係も解消出来ない
- いわゆる里親として育てる場合に多く使われている制度
- 手続きには家庭裁判所の審判が求められるため、普通養子縁組と比較して難しい。
- 特別養子縁組の実親の同意が必要で、父母による監護が困難であったり、不適当である特別の事情がある時に限って認められる
養子縁組の必要書類
役所に提出する必要書類として、次のものが挙げられます。
- 養子縁組届書
- 配偶者がいる場合は、その同意書
- 15歳未満の養子で、法定代理人以外に監護者がいれば、その同意書
- 未成年者の場合や後見人と被後見人の縁組の場合は、家庭裁判所の許可書の謄本
- 本籍地以外で申請する場合は、戸籍謄本
さらに、別途、成年者の証人が2名必要とされています。
尚、婚姻届にも同じように証人が2人求められています。
戸籍や相続への権利への影響
縁組をすると養子は養親の戸籍に入るのが原則です。
但し、養親が戸籍の筆頭者や配偶者でない場合は、養親が筆頭者となる新しい戸籍が作られ、養子・養親ともにその戸籍に入ります。
養子縁組は法律上の親子関係を創出する手続きである為、相続の権利が生じます。
つまり、養親が亡くなれば、嫡出子(婚姻関係にある男女から生まれた子供)と同様の取り分を得られます。
そのことによって影響を受ける他の子供や、子供がいない場合の養親の親や祖父母、あるいは兄弟姉妹といったほかの相続人からの反対に遭うこともあります。
彼らとしても、自分が相続できる財産が減るわけですから、養子が脅威となるわけです。
家のような不動産は相続人の同意が得られないと処分して得られたお金を分配せざるをえなくなる恐れもあり、外部から人が入ってくることを嫌う方もいます。
そのことで、トラブルになるケースも多々あります。
反対に子供のいない状態で養子が先に亡くなれば、養親も相続の権利があります。
亡くなった養子に子供がいれば、相続人として優先される立場にいるため、養親の取り分はありません。
実親に対する相続の権利が普通養子縁組では失われないのに対し、特別養子縁組では親子関係が切れる為に実親は相続出来なくなり、こうしたデメリットも含めて必要とされる場合に限り、特別養子縁組が認められています。
離縁による縁組みの解消
普通養子縁組の場合は、当事者の協議によって離縁を行い、親子関係を解消する事が出来ます。
その為、手軽な制度とは言え、契約型の制度と表現されることもあります。
例えば、離婚の際に婿としての立場を捨てたり、再婚の後の離婚によって連れ子と相手との関係を切る際に離縁が行われています。
こうしたケースに限らず、たとえば親子としてやっていけないほどに信頼関係が揺らいだり、仲が悪くなったということでも離縁出来ます。
但し、話し合いによって協議離縁が成り立つ場合ばかりではなく、思うように関係を解消出来ないこともあります。
その場合には、調停や裁判によって決着を付けることになります。
これに対し、特別養子縁組をすると、実父母との関係が解消されているため、離縁は原則として不可能です。
但し、例外があり、子の利益を著しく害する事由があり、実父母の相当の監護が出来れば、家庭裁判所の審判による離縁が認められています。
このように、離縁の手続きの容易さが全く異なる為、普通養子縁組であるのか、特別養子縁組であるのかによって事情は大きく変わってきます。
離縁すると相続の権利や扶養義務が消滅します。
苗字も戻るのが原則であるものの、縁組から7年を経過していれば、戸籍法の定めに従って3ヶ月以内に届け出れば、離縁までに使っていた苗字を称することができます。
姓の継続の希望があるなら、必ず期日迄に手続きを行っておきましょう。